英国で働き始めるとき、押さえておくべき数字が2つあります。
ひとつは「税」。National Insurance番号(NINo)がないまま働き始めると、緊急税コード(emergency tax code)に置かれる可能性があります。そしてGOV.UKは「これにより、誤った額の税を払うことになり得る」と記載しています。
もうひとつは「休み」。英国では労働者に分類されるほぼすべての人が、年5.6週間の有給休暇を法的に得る権利があるとされています。そしてこれには、ゼロ時間契約(zero-hours contract)の労働者も含まれます。
この2つは、渡航前に知っておけば動き方が変わります。英国ワーキングホリデー(YMS)で働く人に向けて、公的資料で確認できる範囲を整理します。
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先に、2つの数字を並べます
| 項目 | 公式に示されている内容 |
|---|---|
| NINoがない状態で働く | 働くこと自体は可能(就労権を証明できる場合)。ただし緊急税コードになり得る |
| 緊急税コードの期間 | その税年度の終わりまで続く |
| 法定有給休暇 | 年5.6週間(週5日勤務なら年28日以上) |
| 法定有給の上限 | 28日 |
NINoがなくても、働き始めることはできます
まず、よくある誤解を解いておきます
「National Insurance番号がないと働けない」と思っている人がいますが、GOV.UKはこう記載しています。「英国で働く権利があることを証明できるなら、National Insurance番号を受け取る前に働き始めることができます」。
つまり番号の到着を待つ必要はありません。YMS(Youth Mobility Scheme)のビザを持っていれば就労権があるため、仕事が決まり次第、働き始められます。
これは実務上ありがたい設計です。番号の発行を待って無収入の期間が延びる、という事態を避けられるからです。
ただし——ここからが本題です。「働ける」ことと「正しい額の税が引かれる」ことは、別の話です。
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GOV.UKは、緊急税コードの仕組みをこう説明しています。「緊急税コードが適用されている場合、あなたの税は、その週またはその月に支払われた額のみに基づいて計算されます。そしてあなたは、その額を1年の毎週または毎月受け取っているものとして課税されます」。
この一文が、緊急税コードの本質です。
たとえば、ある月に繁忙期で普段より多く働いたとします。緊急税コードでは、その月の金額を12倍した年収があるものとして税率が当てられます。実際の年収はもっと低いのに、高い所得の人と同じ扱いで課税され得るということです。
GOV.UKも結論をはっきり書いています。「これは、あなたが誤った額の税を払うことを意味し得ます」。
そして、なぜ緊急税コードになるのか。GOV.UKは「初めて給与を受け取るとき、新しい雇用主はHMRCにあなたが働き始めたことを伝えます。新しい雇用主があなたの以前の所得と税の詳細を持っていない場合、あなたは緊急税コードを使って支払われます」としています。
つまり情報が揃っていない状態のための、暫定的な扱いです。制度が意地悪をしているわけではなく、「分からないから、多めに取っておく」という設計です。
いつまで続くのか
GOV.UKは期間についても明記しています。「緊急税コードは、その税年度の終わりまで続きます。新しい税年度には、緊急ではない税コードに置かれます」。
英国の税年度は4月6日から翌年4月5日までです。つまり渡航のタイミングによっては、緊急税コードのまま数か月を過ごすことになり得ます。
ここで、渡航時期の話とつながります。たとえば5月に働き始めて緊急税コードになった場合、税年度の終わりは翌年4月5日。1年近く続く計算になります。
だからNINoの申請は、早いほど有利に働く可能性があります。番号が揃い、雇用主が正しい情報をHMRCに伝えられれば、コードが修正され得るからです。
本記事では、税コードの修正手続き、払い過ぎた税の還付の申請方法については扱っていません。これらはHMRCの該当ページでご確認ください。ただし「多く引かれたまま気づかない」という状態は避けられます。給与明細の税コード欄を、最初の給与のときに確認してください。
豪州・NZと同じ構造です
この「番号を出さないと不利になる」という設計は、英語圏に共通しています。- オーストラリア:TFN(税務ファイル番号)を提出しない場合、総支払額の45%で源泉徴収されるとATOは示しています(提出すれば年45,000ドルまで15%)
- ニュージーランド:入口で選ぶ税コードを誤ると、その誤りがそのまま年間の結果になります
- 英国:NINoがないと緊急税コードになり得る
有給休暇は年5.6週間。ゼロ時間契約でも対象です
対象の広さが、この制度の特徴です
GOV.UKは、こう記載しています。「労働者(worker)に分類されるほぼすべての人が、年5.6週間の有給休暇を法的に得る権利があります(法定休暇権利、または年次休暇として知られています)」。そして対象に含まれる人が具体的に列挙されています。
- 派遣労働者(agency workers)
- 不規則な労働時間の労働者(workers with irregular hours)
- ゼロ時間契約の労働者(workers on zero-hours contracts)
「シフトが不安定な働き方だから、有給はない」という理解は、英国では正しくないということです。
これはオーストラリアのカジュアル雇用とは設計が違います。豪州のカジュアルには年次有給休暇がなく、代わりに時給に25%が上乗せされます。英国は「上乗せ」ではなく「権利として付与する」方向です。
日数の計算はシンプルです
基本の計算式が示されています。「休暇日数の基本的な計算としては、週に働く日数に5.6を掛けます」。| 週の勤務日数 | 年間の法定有給休暇 |
|---|---|
| 週5日 | 28日(5×5.6) |
| 週4日 | 22.4日(4×5.6) |
| 週3日 | 16.8日(3×5.6) |
パートタイムについても明記されています。「1年を通じて規則的な時間で働くパートタイム労働者は、少なくとも5.6週間の有給休暇を得る権利がありますが、これは28日より少ない日数になります。たとえば週3日働く場合、年に少なくとも16.8日の休暇を得なければなりません」。
そして上限もあります。「法定の有給休暇の権利は28日が上限です。実際には、この上限は週5日を超えて働く労働者にのみ影響します」。
つまり週6日働いても、法定分は28日で頭打ちということです。 あわせて読みたいワーホリの盗難・詐欺|書面と記録で自分を守る方法ワーホリ中の盗難・詐欺・金銭トラブルの防ぎ方と対処法。運営者のカナダ12ヶ月で実際に起きた事例(友人のクレジットカード盗
入社した日から、権利は積み上がり始めます
「試用期間中は有給なし」ではありません
GOV.UKは、権利の発生時期についてこう記載しています。「規則的な時間で働く労働者については、年次休暇は仕事を始めた時点から積み上がり(accrue)始めます」。
初年度の扱いも示されています。「雇用主は、仕事の最初の1年間における労働者の休暇を計算するために、積み上げ方式(accrual system)を使うことができます。この方式では、労働者は毎月、休暇の12分の1を得ます」。
週5日勤務なら、年28日の12分の1。1か月ごとに約2.33日ずつ積み上がる計算です。
そして、休んでいる間も積み上がり続けます。「労働者は、病気休暇、産休、父親休暇、育児休暇、共同育児休暇、養子縁組休暇の間も、休暇の権利を積み上げ続けます」。
体調を崩して休んでいる期間も、有給休暇の権利は止まらないということです。これは覚えておく価値があります。
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この制度でいちばん強い規定が、退職時の扱いです。
GOV.UKは、こう記載しています。「雇用主は、消化されていない法定休暇について支払わなければなりません。労働者が重大な非行(gross misconduct)を理由に解雇された場合であってもです」。
解雇された場合でも、未消化の有給分の支払いは免れない。これは、有給休暇が「雇用主の裁量による恩恵」ではなく「働いた事実によって発生する債権」として設計されていることを示しています。
ワーキングホリデーは、多くの場合1年で終わります。だから「有給を取らずに帰国する」という人は少なくないはずです。その場合、未消化分は支払われるべきものだということになります。
そして、これは請求しなければ動かない可能性があります。最後の給与に含まれているか、確認する価値があります。
帰国の直前は、確認すべきことが重なる時期です。デポジットの返還、最後の給与、税の精算。どれも「帰ってから」では動きにくくなります。帰国前のお金のチェックリストで、順番を整理しています。
3か国の有給休暇を並べてみる
| 国 | 年次有給休暇 |
|---|---|
| 英国 | 年5.6週間(週5日勤務で28日)。ゼロ時間契約も対象 |
| ニュージーランド | 年4週間(12か月勤務後) |
| オーストラリア(カジュアル) | 年次有給休暇はなく、時給に25%のカジュアルローディング |
3通りの答えがあります
英国は、雇用形態を問わず権利を与える設計です。ゼロ時間契約でも派遣でも、5.6週間が付きます。
ニュージーランドは、勤続期間で線を引く設計です。12か月勤務した後に年4週間とされており、短期で職場を移る働き方では届きにくいことになります。
オーストラリアは、金銭で置き換える設計です。カジュアルには有給休暇がない代わりに、時給が25%高く設定されています。「休みを取る権利」を「その分の金額」に変換しているということです。
どれが有利かは、働き方によって変わります。短期で複数の職場を移るなら豪州のローディングが効きますし、1年通して同じ職場で働くなら英国の5.6週間が効きます。
ここでも、大事なのは「自分の働き方がどの設計に噛み合うか」です。
英国で働き始めたら、確認する3つ
- ①最初の給与明細で税コードを確認する:緊急税コードは税年度の終わりまで続きます
- ②NINoの申請を早めに済ませる:番号がなくても働けますが、あれば正しい税額に近づきます
- ③自分の有給日数を計算しておく:週の勤務日数 × 5.6 です
英国では、National Insurance番号がなくても働き始めることができます。ただし緊急税コードになると、その週・月の収入を1年分とみなして課税され、それは税年度の終わりまで続きます。
そして有給休暇は年5.6週間。週5日勤務なら28日です。ゼロ時間契約でも派遣でも対象で、入社した日から積み上がり始めます。
退職時、消化していない法定休暇分は支払われなければなりません。重大な非行で解雇された場合であってもです。
知らなければ、多く引かれたまま、休まないまま、1年が終わります。確認は、最初の給与明細からできます。
この記事について:運営者はカナダで12ヶ月、米国で半年を過ごしましたが、英国には渡航していません。本記事は制度を公的資料から整理したものであり、現地での就労体験は含みません。
出典はGOV.UK「Apply for a National Insurance number」「Tax codes: Emergency tax codes」「Holiday entitlement」です(いずれも2026年8月時点で確認)。
本記事では、National Insurance番号の具体的な申請手順と必要書類、税コードの修正手続き、払い過ぎた税の還付申請の方法、National Insurance拠出金の料率、雇用形態(worker/employee/self-employed)の判定、有給休暇の賃金額(holiday pay)の計算方法、不規則な労働時間の場合の休暇計算については扱っておらず、判断も示していません。これらについてはGOV.UKおよびHMRCの該当ページでご確認ください。
なお本記事が扱う内容は、地域によって取り扱いが異なる場合があります。北アイルランドについてはnidirectに別途の案内があります。制度・税率・金額は改正されます。個別の税務・労働問題については、HMRC、ACAS、または専門家にご相談ください。本記事は税務・法的助言ではありません。
英国の週48時間上限は本人の同意(自発的・書面)で外せますが、拒否しても不利益を受けないと明記されています。一方NZの休憩(8時間勤務で10分2回+30分1回)は、契約で減らす条項が効力を持ちません。
→ 労働時間と休憩|英国の48時間オプトアウトと、NZの減らせない休憩
FSCSの預金保護は£85,000 → £120,000へ(2025年12月1日から)。また9行にはベーシック銀行口座の提供義務があり、申請が却下されても理由を尋ねる権利があるとされています。
→ 英国の銀行口座|上がった預金保護と、ベーシック口座の提供義務
英国の法定最低通知期間は勤続12年以上で12週間、オーストラリアは5年超の4週間が上限(45歳超・勤続2年以上でさらに1週間)。ワーホリの1年ならどちらも基本は1週間で、豪州には「通知に代わる支払い」という形もあります。
→ 雇用を終わらせるときの通知期間|英国の12週と、豪州の4週
交通費は、学生割引が使える前提で見積もらないでください
シドニーは国籍、バンクーバーは年齢、オークランドとロンドンは学習量で線を引いています。語学学校に通っても割引の対象にならない都市があります。
採用の可否は、経歴より「一緒に働けそうか」で決まる業種があります。そしてその印象は、最初のやり取りの数十秒で作られます。
① 話す回数を積む|ネイティブキャンプ
予約なしで回数を重ねられる形式です。読んで理解できることと、その場で口に出せることは別の能力です。渡航前に場数を踏んでおく用途に向きます。
ネイティブキャンプを見る →
③ 2社目の見解を取る|ラストリゾート
ワーホリ・語学留学の取り扱いが幅広く、資料請求・セミナー・カウンセリングと入口が分かれています。1社の説明が妥当かどうかは、2社目を並べたときに分かります。
ラストリゾートに相談・資料請求する →
よくある質問
National Insurance番号がないと英国で働けませんか?
働けます。GOV.UKは「英国で働く権利があることを証明できるなら、National Insurance番号を受け取る前に働き始めることができます」と記載しています。YMS(Youth Mobility Scheme)のビザを持っていれば就労権があるため、番号の到着を待つ必要はありません。ただし番号がない状態で働き始めると、緊急税コード(emergency tax code)が適用される可能性があります。GOV.UKは「新しい雇用主があなたの以前の所得と税の詳細を持っていない場合、あなたは緊急税コードを使って支払われます」としています。働けることと、正しい額の税が引かれることは別の話だと考えてください。
緊急税コードだと何が起きますか?
GOV.UKは「緊急税コードが適用されている場合、あなたの税は、その週またはその月に支払われた額のみに基づいて計算されます。そしてあなたは、その額を1年の毎週または毎月受け取っているものとして課税されます」と説明しています。つまり繁忙期に多く働いた月があれば、その金額を12倍した年収があるものとして税率が当てられ得るということです。GOV.UKも「これは、あなたが誤った額の税を払うことを意味し得ます」と明記しています。そして「緊急税コードは、その税年度の終わりまで続きます。新しい税年度には、緊急ではない税コードに置かれます」とされています。英国の税年度は4月6日から翌年4月5日までです。
英国の有給休暇は何日ありますか?
GOV.UKは「労働者に分類されるほぼすべての人が、年5.6週間の有給休暇を法的に得る権利があります」としています。計算式は「週に働く日数に5.6を掛ける」で、週5日勤務なら年28日、週3日勤務なら年16.8日となります。法定の有給休暇の権利は28日が上限とされ、この上限は週5日を超えて働く労働者にのみ影響します。重要なのは対象の広さで、派遣労働者、不規則な労働時間の労働者、ゼロ時間契約の労働者も含まれると明記されています。シフトが不安定な働き方だから有給はない、という理解は英国では正しくありません。
試用期間中や働き始めてすぐでも有給はつきますか?
GOV.UKは「規則的な時間で働く労働者については、年次休暇は仕事を始めた時点から積み上がり始めます」と記載しています。また初年度については「雇用主は積み上げ方式を使うことができ、この方式では労働者は毎月、休暇の12分の1を得ます」とされています。週5日勤務なら年28日の12分の1で、1か月ごとに約2.33日ずつ積み上がる計算です。さらに「労働者は、病気休暇、産休、父親休暇、育児休暇、共同育児休暇、養子縁組休暇の間も、休暇の権利を積み上げ続けます」とも明記されています。体調を崩して休んでいる期間も、権利の積み上げは止まりません。
有給を使わずに帰国したらどうなりますか?
GOV.UKは「雇用主は、消化されていない法定休暇について支払わなければなりません。労働者が重大な非行(gross misconduct)を理由に解雇された場合であってもです」と記載しています。つまり未消化の法定有給分は、退職時に支払われるべきものとされています。ワーキングホリデーは多くの場合1年で終わるため、有給を取らずに帰国する人は少なくないはずですが、その分は支払いの対象になります。最後の給与に含まれているかを確認する価値があります。帰国後に交渉するのは難しくなるため、出国前に確認することをおすすめします。なお有給休暇の賃金額の計算方法については本記事では扱っていません。
英国・NZ・豪州で有給休暇の扱いはどう違いますか?
3通りに分かれます。英国は雇用形態を問わず年5.6週間(週5日勤務で28日)を付与する設計で、ゼロ時間契約や派遣も対象です。ニュージーランドは12か月勤務した後に年4週間という設計で、勤続期間で線を引いています。オーストラリアのカジュアル雇用には年次有給休暇がなく、代わりに時給に25%のカジュアルローディングが上乗せされます。休む権利を金額に変換している形です。どれが有利かは働き方によって変わり、短期で複数の職場を移るなら豪州のローディングが効き、1年通して同じ職場で働くなら英国の5.6週間が効きます。
帰国後のキャリアを、数字で設計する
運営者は渡航前年収450万円から、帰国後に大手メーカーへ転職して800万円台になりました。使ったエージェントと3社並行の進め方をまとめています。
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本記事の制度・条件・金額は執筆時点で公開情報を確認したものです(確認日:2026年8月8日)。制度や料金は変更される場合があるため、実際の手続き・申請の前に各機関の公式情報を必ずご確認ください。本記事は法的・専門的な助言ではなく、特定の結果を保証するものではありません。